鞄を持つと、あたしは喫茶店から外へ出た。


「どうしたんですか?」


「本屋に寄った帰りだったんだけど、偶然だね」


「本屋………」





 見れば、喫茶店の二つ隣には有名なチェーン店の書店があった。


「偶然と言えば………。

さっきそこで元倉さんを見かけたんだけど……」


「元倉さん?」


「元倉静香」





 苗字を言われただけだとピンと来なかった名前。


 フルネームを聞いたところで、あたしは静香さんの苗字が元倉だったのだと知った。


「もしかして……。

何か言われたりとかした? 

酷いこととか」





 心配そうに見てくるコウさんにあたしは慌てて否定する。


「いえ。

酷いこととかは全然。

ちょっと、確認をされただけです」


「確認?」