静香さんは少し視線を彷徨わせた後、思い出したように「あ」と口にする。
「ところでよかったのかしら。
お友達、一人で帰らせることになっちゃって…」
「ああ、大丈夫です。
別にこれからどこかに寄るとかそういうわけでもなかったですし」
「そう?
それならよかったけど…」
その点は大丈夫。
呼び止められた時、真澄は何かを感じたのかあっさりと引き下がって一人で帰って行ったし。
でも、だからこそ不安でもある。
あんなに簡単に真澄が引き下がるっていうのが………。
恐らく、明日は根掘り葉掘りと聞かれることは間違いないだろうな………。
そう思うと、自然と溜息が漏れた。
「実は……」
言いにくそうに静香さんが口を開いた時、ちょうどタイミング悪く、注文していたコーヒーがやってきた。
「お待たせしました」
にっこりと笑みを浮かべてやってきたウエイトレスさんは注文したコーヒーをあたしたちの前に置くと、「ごゆっくり」と一礼して去っていった。


