「優しい茅乃なら、わかってくれるわよね~!」





 えぇ!?


 涙を浮かばせながら、そんなキラキラした目で見つめられると………


「う、うん……」





 頷くしかないじゃないか。


「わかってくれる? 茅乃! 
やっぱり、茅乃は優しいから。

ありがとう、茅乃。
ママたちの思いを汲んでくれて」


「・・・・・はい?」





 いや、ちょっと待って。


 そりゃ、圭くんのママの気持ちや、あたしの家庭教師の話にそういう事情があることはわかった。


 だけど、それを引き受けるだなんて、あたしは一言も………。


「ママたち、茅乃なら絶対に引き受けてくれるって思ってた」





 断ろうとしていたのに、「ママたち」という言葉に、あたしは開けていた口を閉じる。


 ママだけなら、何を思われようが絶対になんとしてでも断るあたし。


 だけど、ママがこういう人なため、あたしは幼い頃から処世術なるものを身につけてしまった。


 そのために、ここで自分が断ったことで圭くんのママがどう思うのだろうと考えてしまった。





 その一瞬の迷いが、断ることを逃してしまった。





「ああ、登紀子(ときこ)さん? 
茅乃、OKしてくれるって!」





 ハッと気づいた時には、ママは圭くんのママに電話をしてしまっていた。


 それより、さっきすでに頼んでるって言ってなかった?


 何がどうなっているのかわからないけど、一つだけはっきりとしたことがある。


 それは、あたしはどうやら圭くんに家庭教師をしてもらうことになったらしいということだった。