「あ、茅乃! 

何をトロトロと歩いてるのよ! 

ほら、圭くんがお待ちかねよ」





 ママ、この足取りの重さは、行きたくないという気持ちを表しているんだよ。


 そこを、気づいてよ。





 心の中で叫ぶものの、このママにそんなことを期待するほうが間違ってる。


「もう! 

二人はいつの間にデートをするような仲になってたの? 

ママ、全然知らなかったわ。

茅乃ったら、全然話してくれないんだもん」





 年甲斐もなく、ぷぅと頬を膨らますママ。


 いいかげん、自分の年のことも考えて、そんな仕草をしてください。


 娘のあたしのほうが恥ずかしいんだから。


 おまけに―――…


「ママ、

大きな勘違いをしてるみたいだけど、

デートじゃないから!」





 妙な勘違いは早めに修正しておかないとね。


 ママのことだもん。


 想像だけでやたらと話が大きくなりそうだし。


「え? 

デートじゃないの? 

だって茅乃、珍しくお目かしなんてしちゃってるじゃない」


「こ、これは………」





 目の前に意味深な笑みを浮かべているこいつに命令されたからだ!