「いいじゃないの、茅乃。

これも慈善事業だと思って………」





 ママの言葉に、あたしはピクリと反応する。


「慈善事業? 

あたしの成績が下がったとかそんな理由じゃないわけ?」





 ママはしまったとばかりに、慌てて口を押さえる。


 尤もらしい理由を並べてたけど、やっぱりあたしの成績が下がったとかそんなのはこじつけなんじゃない。


 おかしいと思ったのよ。


 たかだか、順位が一つ下がったぐらいで今まで無関心だったママがいきなり大騒ぎするなんて。


「ちゃ~んと説明してくれる? ママ!」





 気まずそうな顔であたしを見てくるママにあたしは詰め寄る。


 初めこそ、口を押さえたまま、絶対に言わないとばかりに顔を横に振っていたママだけど、結局のところは諦めた。





「た、頼まれたのよ~…。

圭くんのママに」


「はい~? 

なんで、また………」


「茅乃にはわからないのよ。

たった一人の子供が親元を離れて、ましてや男の子なんて連絡一つしてこない。

だから、週一でもいいから茅乃の家庭教師をすることで、圭くんと顔を合わせることができる。

そんな圭くんママの切ない願い………」





 ママはしくしくと涙を流していたものの、いきなりガバッと顔を上げたかと思うとあたしの手を握りしめてきた。