「いや。……で、何?」
「あ、今日の放課後空いてる?」
「……あぁ」
「クリスマスイブだしさ、どっか行かない?」
俺を見上げ、彼女はにこにこしながらそう問い掛けてきた。
「……別にいいけど」
本当は嬉しいのに、俺はどうしても無愛想な返事しかできない。
「本当っ!?
じゃあまたメールするね」
そう言って、黒澤は去っていく。
ポケットに入っているラジオをカチリとつけ、イヤホンを耳に差した。
ザザ……ザ……
今日もラジオからは、黒澤の予報が流れてくる。
結局、ラジオは謎のままだ。
もしかすると、黒澤を助けていくのが俺の使命なのかもしれない。
『12月24日20時13分43秒。
黒澤遥さんのニュースをお知らせします。
同級生の持田という男子生徒とのデート中に…………ザザ…ザ…
小さくなっていく彼女の後ろ姿を見つめる。
ただ俺は、
これからもずっと、黒澤を見守っていきたいと思った。
end


