画面に浮かぶ彼の文字を見て、素早く通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「あ、……墓参り行った?」
電話越しに、彼の低い声が聞こえる。
「今、行ってきたよ」
「そっか」
「……本当に、ありがとうね」
「……なにが?」
「去年、助けてくれて」
「……別に」
無愛想な返事に、私はどこか温かさを感じた。
「じゃあ、また学校でね」
「あぁ」
プツリと電話が切れ、私はパタンと携帯を閉じる。
振り替えると、墓参りを終えたおばさんがいた。
去年、信号無視で事故をおこして亡くなられた運転手の、お母さんだ。
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