線香が静かに緑から灰色に変わっていく。


立ち上がって帰ろうとすると、花と線香を手にしたおばさんが立っていた。


このお墓に眠る人のお母さんだ。


私がぺこりと頭を下げると、向こうもぺこりと頭を下げた。


おばさんの目は暗く、全体的に疲れきった感じだった。


おばさんも相当辛いだろう。


実の息子が、亡くなったのだから……。


私は目を伏せながら、おばさんの横を通りすぎた。


そのままたくさんのお墓の間を通り、足早にその場から出ようとする。


その時、制服のポケットから携帯電話の鳴る音が聞こえた。


「……?」


電話の着信音だ。


誰だろうと思いながらポケットに手を入れ、携帯を開く。