はじまりの合図


『チャラいの嫌いなん?』

「嫌いだな」

『えぇ、ほんま?うち結構好きねんけどな』

アメリカ人のように肩を上げて冗談のように笑った。有紗はその男の子を見ようと必死にしていた。

『もうちょい前の女が頭引っ込めればいいねん!見えへん…。はよ、上上がってきぃへんかな』

そわそわする有紗は段々道を開けていく前の人達を見ながら、やっと男の子が見れると首を長くしていた。

『あぁ、うち、あいうの無理やわ。めっさ自分に自信あるみたいやんか。はぁ、期待して損したわぁ!あはは』

なんて笑ってるけど、男の子は別に自分に自信はないようだけど…。なくはないと思うけど、ありもしない…。

『さ、行こうや』

後ろの人も多いせいで階段というのにガンガン押してくる。つかの間だった。階段を踏み外し足場を崩した。あぁ、もう顔打ち付けるな…。

『…っと。ぁっぶね』

なにこの状況。少女マンガみたいな。っていうか、この人誰。もしかしてあのチャラい人?めっちゃ王子様みたいじゃん…。

『なに?お礼とかねぇの』

……はい?

『おい、聞いてんの?お礼は、って言ってんだけど』

「あぁっ、…ありがと」

『魂入ってねぇな』

不満そうに手を離しじっと顔を見てきた。顔は綺麗なのにまじむかつく奴。気に入らない。

『まぁ、いいや。じゃあな、足元気ぃ付けろよ』

通り過ぎようとしているソイツに声をかけた。

「あ、ねぇ!」

『なに』