全て初めての事。
全て初めての経験。
初めてこんな痛みを味わう。
痛みにひたすら耐えている自分が母親になる。
ライトアップされた分娩台で私はお腹の痛みに合わせながら医者や看護婦の声に合わせいきんでいた。
一度目で頭が出て来た。『フーフーハーハーッ』呼吸を整えながら2度目を踏ん張る。
力いっぱい踏ん張り我が子との対面が待ち遠しくてたまらない思い。
勿論、必死で踏ん張っていた。
体が半分出た所で子供の危険も考えた医者の判断で入り口を少し開く為に切る事になった。
…その後すぐに3度目を踏ん張る事になった私は力いっぱいに踏ん張って踏ん張って踏ん張った。 『おめでとう。男の子ですよ』
看護婦さんの声がした。力が抜けた私の耳に微かに聞こえていた。
しかしまだ子供の泣き声が聞こえていない。
『オギャーって泣かないの?』
不安が心の中にあった。時間は一分もないわずかな間が長く感じた。
分娩台の上から今、産まれたばかりの我が子の姿を見つめていた。

その時…

『オギャー』大きな声で元気よく泣く我が子。
ホッとした私は早く抱きたくて仕方なかった。
『看護婦さん、早く私の子供を私の元に連れてきて』
分娩台の上で私は心の中でつぶやいていた。
5分程して私の元に私の我が子を抱く事ができた私は今までにない幸せを感じ2980gの男を無事出産したのです。
予想通り予定日より8日早く私の宝が誕生したのです。
それも実の母の終電がなくなる前に…
不思議な事にスムーズに予想通りになっていた。
看護婦さんが廊下にいる実の母に我が子の顔を見せて抱っこしてもらってくれた。
出産に必死だった私は、時間さえわからなかったので実の母が廊下で待っていてくれている事さえ知らずにいた。
『やはり産みの母。私を産んでくれた母。』
そう心の中で感謝の気持ちであふれていた私は、『ありがとう』と言い終電ギリギリとなり急ぎ足で帰る実の母をベッドの上から見送った。
この日から私は母となり実の母はお婆ちゃんとなったのです。
無事に出産できホッとした私は疲れて知らぬ間に眠りについていたのです