唇を噛みしめ勇気を振り絞り、若女将の居る旅館の暖簾をくぐった…。

知った顔が居ないことが唯一の救いだった。
『お泊まりでいらっしゃいますか?』

中居に声をかけられた。私が頷くと何の疑いもなく客室へと通してくれた。

部屋に落ち着くとその懐かしさに気持ちが引き戻され安堵に包まれた…。

『夕食は6時にお運び致します』

1人になり横になるといつの間にか深い眠りに吸い込まれていった…自然に…。