「父ちゃん!金!」



「千円か?」

スポーツ新聞を読みながら那抖のパパは答えた。



「10万!クーラー買う!」

「何言ってやがんだ
    コノヤロー!」


パパは近くにあったテッシュの箱を那抖に向かって投げた。



俊敏によけた那抖はポケットに手を突っ込んだまま、パパを見下ろして脅すような目つきに低い声で言った。



「ふーん。紗茅がうちに
 来なくなってもいいのかぁ」



那抖のパパは読んでいた新聞をゆっくりと置き、財布の中からキャッシュカードを出した。



「買って来い・・・ほら!

 暗証番号は7714・・・
 なかなかいーよだ」


「よっしゃー!紗茅行くぞ!」



那抖はガッツして、高らかにカードを上げて見せた。


「やーん、パパありがとう♪」


「いいってことよ!」


「ねぇ、那抖?でもさぁ、
 工事とか今日は無理くない?」


「わかんねぇけど。あっ!
 知り合いに
  やってくれる奴いる!」


「さっすがぁ♪」


那抖はすぐに携帯を開き、誰かに連絡した。

「もしもし?おー久しぶりだな。
 おまえクーラー着けてくんね?
 忙しい?そこをなんとかさぁ。
 いい!何時でもいいから!」

那抖は電話を切りニコッとした。



「やったぞ!紗茅!」


「きゅいーん!
 クーラー!クーラー!」

「そーんなにうれしいか?」


「はい、那抖が神に見えますぅ♪」


「アホかっ!おまえ!」



それからあたし達は、暑い中自転車をこいで電気屋さんにクーラーを注文しに行った。