――5年前
「ママ・・・ママ・・・!」
どんどんっ
少年は小さな拳で、精一杯ドアを叩いていました。
寒さに震えながら、懸命にママを呼び続けます。
「・・・っ!ママ!」
その時、ママが出てきてくれました。
少年は安心して、にこりと笑います。
しかしママは、うんざりした顔で少年に言いました。
「ママは忙しいの!外で遊んでなさい!!」
ママはその場にあった、うさぎといぬとねこのぬいぐるみを掴んで、少年に投げつけます。
「おい、どうしたんだよ。」
「・・・ごめんなさい。なんでもないの。」
ママは男の人がくると、すぐにドアを閉めてしまいました。
少年は泣きじゃくりながら、投げつけられたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめます。
ママ、ママ・・・
寒いよ
お腹すいたよ
寂しい・・・よ・・・
涙はぬいぐるみたちに、ゆっくりと染みわたります。

