「…あたし、零の力にはなれないのかな」


殆ど冷めてしまったマグカップを両手で包み

空っぽの底をぼんやり見つめながら尋ねた。


「ハハ!大丈夫だよ。
気を遣わせたね、ごめんね?忘れて」


「でも、力になりたいの、あたし…」


真剣に言うあたしに零は

「ありがと」

と一言言い、行こうか、と席を立った。





――あたしは零の心には

入れないんだ…


あたしには、見せてくれないんだね…。



二人共黙ったまま駅まで歩いた。


嬉しくて舞い上がっていた誕生日が

湿っぽい雰囲気に変わってしまった。



何か話さなきゃ…と思うのに、何も見つからない。


聞きたいことは山ほどあって…

それでもそれを口に出来ないもどかしさ…



それ故に、何も話せなくなってしまった。





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