その顔を見て、先日アキが
『アイツ、色々あったからさ…』
と言ったことをあたしは思い出していた。
それから次第に乗客も増え
あたし達は得に話すこともなく、電車に揺られていた。
あたしはチビだから、目の前には零の胸がある。
微かに匂うコロンが、鼻腔から脳へ刺激され
あたしの体は熱を帯びる。
(こんな近いと心臓の音、聞こえちゃいそう!)
あたしはその音を隠すように、口を開いた。
「実は…今日誕生日なんですっ!」
「あーそう!へぇ…今日は3月の……」
「5日です!」
「そうかー19歳だっけ?」
「まだ19だ…早くハタチになりたーい!」
「関係ないよ…」
ポツリと零はそう言うとまた顔を上げ
あたし達は終点まで無言になった。