零が突然立ち上がった。


「わりぃ!バイトの時間だから、俺行くわ!

京奈ちゃん、ごめんね。
こんな所まで付き合わせちゃって…」


「全然!凄く貴重な体験で…ありがとう」


「アキ、悪いけど京奈ちゃんを松河の駅まで送ってやって?」


「そ、そんな…大丈夫です!」


「雨、降りそうだし……それにアキはどうせ暇なんだからいいんだよ」


零は、窓の外のどんよりした空をチラリと見て

それからアキの方を見て笑いながら言った。



「…んだよっ、どうせ暇って…今日は休みなんですー!」


「んじゃ、よろしく。
京奈ちゃん、またね!」


そう言うと、二人分ね、と千円札を二枚机に置き、零は店を後にした。



「え、ちょ、あの…」


あたしの声に振り向きもしないで……。