―――零?!
驚いて零を見ても、零の視線は相変わらず真っ直ぐのまま。
そう、零が手を握ってくれたのだった。
あたしはドキドキして、人のこもった車内の湿気も手伝って
じんわり汗ばんでくる。
当然、掌も汗ばんで、恥ずかしくてたまらなかった。
掌を通して伝わってくる、優しくて温かいキモチ…
いつも冷たい印象を与える零が
本当はすごく優しい人なんじゃないか…って思った。
クールを気取っているように見えるのは、シャイな人なんだって……。
零のこと、もっと知りたい…!
あたしは昨日や今朝のヒロとのことを、すっかり忘れたかのように
零のことばかり考えた。
終点に着いて、電車を降りるとすぐに
あたしは自分から手を離した。
スーッと冷たい風が心地よかった。
けれどもそれは降りた時だけで、外の空気に触れ
離した手がスースーとしてくると、また憂鬱な気分が戻ってきた。