やってきた電車に乗ると、いつものように遠い目で窓の外を見ている、零の姿が目に飛び込んできた。



零…?

あなたはその瞳に何を映してるの?

あたしが乗ってくるかも…なんて

これっぽっちも意識してないの?





あたしは迷わず零に近づいた。


「おはよう…ございます」

「あぁ…」

零の返事は素っ気ない。

あたしは悲しくなって下を向いた。

暫く黙っていると

「今日は元気ないね」

零が突然言った。

顔を上げると零と目が合った。


「そんなこと…ない」

そう言い、あたしはまた俯いた。


零はそれ以上何も言わなかった。


人が乗り込んで、奥へとやられると

今日は零も一緒に人波にまみれて、あたしの隣に立った。



ガタン!と大きく揺れて電車が発車する。

その時、あたしは重心を崩し、グラリと傾いた。


その腕を零がしっかり捕まえた。


「…ありがと」

横目でチラッと零の顔を見ると、何も言わず真っ直ぐ前を見ているだけだった。



そして、次の瞬間・・・・・





手に温かい感触が広がった。