バイトを終え、帰宅しようと駅からの道を歩いていると
暗がりの中、家の前にヒロの愛車、真っ青なRX-8が
外灯に反射し、青緑のように光っているのが見えた。
あたしは歩調を緩めた。
けれど、家に帰るには避けられない。
迷ったところで、状況は変えられないと悟り
あたしは開き直って歩いた。
ヒロがあたしに気付いて車から降りてくるシルエットが浮かぶ。
元来た道を走って戻りたい衝動に駆られながらも
手にギュッと力を込め、ヒロに近づいた。
「なんで携帯電源切ってるんだよ!」
いきなり大声で言うと、ヒロはあたしの腕を掴んだ。
「ちょっ…痛い!大声出さないで?放してくれる?」
あたしは手を振りほどこうとした。
それでもヒロは力を緩めなかった。
「ねぇ、痛いってば!」
「じゃあ乗れよ」
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