鞄から携帯を取り出さなくても、そのメロディーから、相手がヒロだということはわかっていた。


あたしは出ようかどうしようか迷った。



「携帯鳴ってるよ?」

零の声に、あたしは慌てた様子で鞄から携帯を取り出し、通話ボタンを押す。


「はいはい?」


声のトーンを落として電話に出た。


あたしは動揺してて、その瞬間、鞄をズルリと下へ落っことしてしまった。


それを零が拾ってくれた。

あたしは軽く頭を下げ、笑った。



「京奈?今どこ?」


「ん?もう電車の中」


「そっかぁー
俺さ、旅行のパンフレット貰ってきたから
どこかでお前拾って一緒に見ようかと思ったんだけど…
そっかー電車かー」


「もうすぐ着いちゃうし」


「んーじゃあ今度持ってくよ。
明日はバイトだからあさってな?迎えに行くから」



あたしはヒロの賑やかな声が漏れて、零に聞かれないかヒヤヒヤして

ギュッと強く耳に携帯を押し当てていた。