間もなく終点に到着した。
あたしが乗る駅を最後に
こちら側のドアは開かない。
終点も反対側のドアが開く。
1番奥にいるあたしは
なかなか出られない。
すると先程のサラリーマンが、周りの人に
「この子、具合悪いから、先に通してあげて下さい」
と声を掛けた。
周りの人達は、それを聞いて体を避けてくれ
あたしは無事ホームに降りることができた。
だけど、ふらふらして
ちゃんと歩けない。
皆、急いでいるので
足早にあたしの横を通り過ぎて行く…
すると斜め後ろから、覗き込むようにして
「大丈夫?そこのベンチで休んでから行ったら?」
そう声を掛けてきたのは
《黒の君》だった。
「はい…ありがとうございます」
あたしが言い終わらないうちに
黒の君は人並みの中に紛れて
黒い後ろ姿が
どんどん視界から小さくなり
やがて階段を降りて行くのを
あたしはずっとずっと目で追っていた。


