それから間もなくして、あたし達は着いた電車に乗り

あたしが降りる駅まで、色々と話をした。



零はあたしより3つ先の下原駅で降りること。

年齢は23歳。

高校時代からバンドを組んでいること。

音楽の専門学校へ行ったけど中退したこと。

今はプロを目指して、フリーターをしながらバンドの練習や曲を作ってること。

でも、親には反対されていて、理解してもらえないことも…




20分もすると、あたしの降りる駅に着いた。


「ありがとね、これ」

零は紙袋を少し上げて言った。

「お腹壊したらごめんね!」

あたしは茶目っ気たっぷりに言い、手を振って電車を降りた。


それからあたしは電車が発車し、零が見えなくなるまで手を振り続けた。



いつの間にか冷たかった手は暖かくなっていて

心まで温かい気持ちが溢れていた。





なのに


「ハァーックシュン!」


あたしはまた大きなクシャミを一つして、鼻を啜った。