「…もしかして、待っててくれたの?
手が凄く冷たいよ?」
零があたしの手を握った。
あたしは慌てて手を引っ込めて言った。
「少しだけです。バイト9時までだから、その後…
……あはは、大丈夫ですよ?あたし冷え症だからいつも手冷たいんです。
そ、それに今日に限って手袋忘れて。鈍臭いから…ははっ!」
あたしはどうも照れ臭いと余計なことを喋っちゃう。
沈黙とか、苦手で…。
「ごめんね、待たせちゃって」
零があたしの顔を覗き込んだ。
「えーっ!謝らないで下さいよぉー!
あたしが勝手に待ってたんだし」
「でも、ライブなかったら8時位には帰ったんだけど」
「それじゃあ、あたしバイト中でもしかしたら見過ごしたかもしれないし…
だからこれでよかったんですって!」
「そうか…ハハッ」
零は小さく笑った。


