時計を見ると、もう10時半だった。


寒さと心細さで泣きたくなる。


(11時まで待って来なかったら帰ろ…)


(何やってんだ、あたし…)


気持ちは完全に萎えて、時計ばかり見ては溜息をついていた。





11時まであと5分という時だった。


暗い階段を昇ってくる人影――





・・・・・零?


あたしは瞬きを繰り返した。


(やった!零だ!)


零が階段を見ながら一歩一歩昇ってくる。


あたしには全然気付いてない。



零が近づいてくるとあたしの足はガクガク震えてきた。

ここまで待ったというのに、何だか待ち伏せしていたのが恥ずかしく急に怖じけづいてしまった。

そしてあたしは俯き、偶然を装った。





「あれ?京奈ちゃん?!」


零の声にびっくりしてあたしは顔をあげた。