それからのあたしはヒロといても上の空だった。



電車に乗った時はもちろんのこと

バイトしている時も

いつでも零の姿を探している自分に、半ば呆れながらも

それでも零のことが段々心を占領し始めていた。





あの時のようにバッタリ出くわすことなんてなかなかなくて


たまに電車で見かけたり

立ち読みする姿を

胸を時めかせて見ている…


話しかけられる距離でもなく

ただ遠くから見ているだけ…


それだけであたしは十分幸せだった。



時々気がついて目が合うと笑ってくれる。


そんな些細なことが嬉しくて……





でも零は……

いつも淋しそうで

哀しい目で笑うだけ…



あたしとこれ以上仲良くなろうとか

話しをしようとか

そんなことはこれっぽっちも思ってないようだった。



中学生の頃、憧れの先輩を遠くから見つめる…


そんな秘めた、淡い想い…


伝えたくても伝えられない……



あたしの中に芽生えた

零への恋の蕾



花開くことなんて

きっとないんだろうな……





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