その日を境に、黒の君はあたしの顔を覚えてくれた。


電車で会うことは稀だった。



(毎日は乗らないって…
何してる人なんだろ)


(幾つくらいなんだろう…)


(どこから乗るのかな…)



次々興味が沸いて来る。


でも、電車で顔を合わせると会釈する程度で

話す機会は持てなかった。



それでも、黒の君を見つけると

あたしの胸は大きな音を立てる。


周りに聞こえちゃうんじゃないかと思うくらいに……



黒の君が、あたしに気付いてくれた時は

それはそれは一日がハッピーで

学校へ行くと必ずみんなにバレてしまう。



「京奈って…わっかりやす〜い!」


「ヒロ君に勘ずかれちゃうよ?」


などといつもからかわれた。