零は顔を上げると、あたしに気付いて歩み寄ってきた。
「お疲れ様」
「寒いのに待っててくれてありがと!ほら、これ…」
あたしは首元からネックレスを出して見せる。
零は照れ臭そうにチラッと見ただけだった。
改札を抜け、電車に乗り込む寸前…零が言った。
「今日これから何か用事ある?」
「えっ?」
あたしは零を見上げた。
「よかったら、俺んち来ない?」
「えっ?」
(え?しか言えないのかよ!)
自分に突っ込むけれど、突然の誘いに戸惑っているのは確かだ。
「そんなビビんなくていいよ。何もしないから」
零に言われて、あたしは赤面する。
「ちがっ、違うよ!そんなのわかってるよぉ〜」
「また、すぐムキになるね」
と零は笑う。
「俺、パスタ上手いんだ!腹減ってない?作ってあげるよ」
「ホントに?じゃあ行く〜!」
「ハハッ!やっぱ食い物につられたか!」
「わっ!意地悪〜!そんなんじゃないですぅ!」
あたしは口を尖らせる。
でも嬉しかった。
心の中はもう躍り出していた。


