家の近くについた時には、もう0時を回っていた。


息苦しくなるほどの沈黙が、車の中で鈍い空気となってあたし達を包んでいた。

先に沈黙を破ったのは、ヒロだった。


「やっぱさ、これだけは受け取ってもらえないかな…」


後部座席に一旦は投げ捨てた袋を、またあたしの前に掲げる。


「………」


「そんなに気にすんなよ。俺だって持ってたってしょーがねぇからさ」


「…うん」


あたしは遠慮がちに袋を手にする。



その瞬間ヒロはまたあたしを強く抱きしめた。


「女々しいだろうけど…離したくないんだよ…

……少しの間でいい…このままでいさせてくれ」


あたしは、どうしてあげることもできない…

だったら…せめて…

せめて今だけはヒロの願いを聞いてあげるしかない…


黙ってヒロの腕に身を委ねた。




人の心って…

難しいね…



あたしは零が好きで

そんなあたしをヒロは好きでいてくれて…



もし、零の存在がなかったら

あたし達、上手くいってたのかな…?





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