「…ごめん……」

ヒロは体を離すと、運転席にため息と共にドサッと座った。


「馬鹿だよな…俺…」


その言葉を聞きながら、あたしはシートを起こす。


何も言葉がみつからず、ただ涙を拭いながら

あたしは窓に映った、ヒロの切ない顔を見ていた。



どのくらい、沈黙が続いただろう…


長く感じるようで、そうでもなかったかもしれない。



「俺…諦めるわ…
でも、京奈が好きなんだ…好きでたまらないんだ…」


意外と長い睫毛を伏せ、ヒロは静かに言った。


「あたしの我が儘で…ごめん…
あたしも…ほんと…馬鹿」

あたしにはそれ以外の言葉は見つからなかった。



「悪いけど……
俺はそいつが憎いな」


口調はあくまでも、穏やかだった。


「恨むならあたしを恨んで?」


「……庇うんだ?」


「そぅじゃないっ!」


あたしがそう言うと、ヒロは来た道を引き返した。