と思うと、助手席との間から、体をよじり
後部座席から小さな袋に手を伸ばして取り上げた。
身構えていたあたしは、ホッと胸を撫で下ろす…
けれども、胸のざわつきは一向に治まらず
まだ警戒心は解いていない…
背中にヒヤリと冷たい感触がするが
やけに緊張から体はほてっている。
目の前に差し出された
ブランド名が印刷された、小さな袋…
「これ、お前がずっと欲しかった指輪」
その中身が何なのか、あたしにはすぐに判った。
「無理…貰えないよ」
「俺の気持ちだから…
初めての誕生日は指輪がいいって…
ずっと言ってたじゃん?」
「そうだけど…今はもう付き合ってないし…」
「俺は待ってるよ?どうせ片思いで、上手くいくわけないんだから!」
「それは……
でもあたしは好きだから」
“好き”という言葉が、ヒロのカンに障ったのだろう…
「ッッざけんなよ?
俺はお前に、お前が喜ぶと思って…せっかく買ったのに…
なんでだよ!そいつのどこがいいんだよ?!」
チキショウ!と言いながら、ヒロはハンドルを思いきり叩いた。


