「……京…奈ちゃん…?」

零が気がつき、階段の下で足を止めた。


「…ごめんなさい…なんでもな………」


言いかけた瞬間、あたしは零の腕の中にいた。


零が柔らかくあたしの体を包む。


零の体温に触れて、あたしは余計切なくなって

涙が止まらなくなってしまった。



「…ごめんね」

零はそう言って、あたしの髪を撫でた。



何がごめんね、なの?


…それって…

あたしの気持ちに応えられないってことの“ごめん”なの?



あたしは、思い切って聞いた。


「ごめんって…何が?」


言ってしまってから後悔する。

耳を塞いでしまいたい衝動に駆られた。



――いやっ!言わないで!




「誕生日なのに、泣かせちゃったから」


ホッとする反面、上手くごまかされてしまったみたいで

あたしは肩透かしを喰らったようだった。



「零のせいじゃないよ」


あたしはやっと顔を上げると涙を拭った。


「可愛いと思ってるよ?」

零があたしの濡れた頬を指でなぞりながら言う。



――だから…!


その中途半端が悲しいのに…


あたしはまた俯いて涙を零した。