それから3日経った朝だった。


早朝からの雨は憂鬱で

電車の中は湿気と埃が入り交じったような臭いにむせ返るようだ。



これが人が増えてくると

濡れた傘なんかが衣服や足にくっついて、全く不愉快になる。



視線を落とすと足元に傘の先からポタポタと雫が落ち

小さな水溜まりのようになっている。


それを傘の先でツンツン突いて弄びながら

(あ〜あ……)

と心の中で呟き顔を上げた。





すると、一つ前のドアに

黒い背中を発見した。



あたしはその背中を凝視する。


(あの後ろ姿って…)



間違いないか、首を伸ばしたり、角度を変えたりしながら確認した。


(きっとそうだ!)



途端に鼓動は早まり、ソワソワしてきた。


終点に着くまでがやけに長く感じる。



あたしはずっと

黒の君の背中を見ていた。



今日こそ、絶対に声をかけよう―