「目が覚めたか?」
誰?
ここは?
「白湯だ、飲め。」
とてもギラギラとした輝きを放つ男。
私は痛む体を無理やり起こして男から湯飲みを受け取った。
「これはお前のものか?」
白湯に口をつけると男は私の前にクナイを差し出してきた。
春牙のクナイ。
「それは私のものだ。」
春牙と死に別れてから里を滅ぼした春牙の形見のクナイ。
私に残された唯一のもの。
「そうか、大事そうにその胸に抱いていた。」
「私はなぜここにいる?ここはいったいどこなのだ?」
「俺の名前は島左近、ここは俺の妻の家だ。妻の父は北庵法印といってな、この辺では名の知れた医者だ。ゆっくり養生するといい。」
男はそれだけ言うと部屋を出て行った。
春牙のクナイ。
これを胸に抱いて私は倒れていたのか...。
里を滅ぼすために使ったクナイ。
春牙...私は生きている。


