スルスルと滑るように私の着物の上を冬牙の手が動き回る。
帯をとかれ、着物に手がかけられる。
その時聞こえた鈍い音。
ドスッと人の体を硬い何かが貫くような、その音と共に冬牙の体が私の上に落ちてきた。
「朱里、好きだよ。俺はずっと朱里だけを見てきたんだ。俺の...俺だけの朱里...」
苦しそうに吐き出される冬牙の言葉。
降ってくるのは紅。
冬牙の首から噴出す紅。
「春牙、そんなに朱里を放したくないのか?お前も直に死ぬ。お前の体の中の毒は毒消しなんてないんだよ。俺も、お前も朱里を手に入れることはもう出来ない.....出来ないんだ。」
「イヤーッッ!!」
冬牙のその体を支えている腕の力がガクリと音を立てて折れた。
息をしていない冬牙。
もう何も考えられない。
どうしてこんなことになったの?
いったい何が起こったの?
もう頭がついていけない。


