冬牙に近付いて私は彼に告げた。
春牙の命を引き換えに冬牙のものになると...。
そうしたら春牙は助けられる。
春牙を永遠に失うくらいなら....
どんなことにも耐えてみせる。
「嬉しいよ朱里、俺のものになってくれるんだね。」
私を抱きしめる冬牙。
春牙とは違うぬくもり...。
春牙とは違う..違う....。
溢れる涙は止まることを忘れた。
「春牙、お前まだ死なないよな!目を開いて見ていろよ。お前の大事な朱里が俺のものになる瞬間を...。」
楽しそうに喉をクツクツと鳴らしながら笑う冬牙は私の着物に手をかけた。
どうしてすぐに春牙を助けてくれないの?
どうして私たちを苦しめるの?
愛しい人の目の前で私は...
どうして抱かれなくちゃいけないの?
溢れる涙で何も見えない。
私を見ないで。
あなたにだけは見られたくない。


