近付く冬牙に春牙は立ちはだかり私を体から放した。
「朱里、奥まで走れ!」
「そうはさせないよ!」
二人の男は睨みあった後お互い距離をとった。
「やめて!!争うなんてやめて!!」
叫ぶ私の声が洞窟に響き渡る。
それでも止まらなかった。
お互いの技をぶつけあう男たち。
訓練ではない実践。
体のあちこちから飛び散るのは紅。
体のぶつかる音に混ざって金属音も響いていた。
冬牙と春牙の得意とするクナイは接近戦に用いる忍の武器。
冬牙にクナイを教えたのは春牙...。
その春牙が冬牙に負けるわけはない、だけど膝をついたのは春牙だった。
「春牙!!」
駆け寄り彼の体を支える私を彼は怒鳴りつけた。
「逃げろと言っただろう!!」
「春牙をおいて逃げることなんて出来ない!」
春牙の体を支えながら冬牙を睨みつけた。
春牙が負けるわけがない!!
「春牙に何をしたの!!」
冬牙に向けた言葉。
春牙は苦しそうに息を荒くしている。
「クナイに薬を塗っていただけだよ。」
悪びれる様子も見せず淡々と答える冬牙。
「卑怯者!!」
彼を罵倒する私の声が響き渡った。


