「お前がどこに行こうと構わない、だが朱里は置いていけ。」
冷たい瞳を向けて冬牙は春牙に話しかけている。
「貴様!よく首里の前に姿を見せれたな。親父様を殺したお前に朱里を渡すことは出来ない。里もお前のものではない、朱里のものだ。」
私を自分の背中に隠すようにして冬牙に対峙する春牙。
「朱里は俺のものだ。朱里も里ももう俺のものだ。」
信じることは出来なかった。
私と同じ年の冬牙、兄弟のように育ってきたんだ。
母の乳を一緒に飲んで育った乳兄弟。
その冬牙がどうして?
なぜ裏切るの?
「朱里、ずっと好きだったよ...。俺のものになれ、春牙から放れて俺のもとにくるんだ。」
手を広げて近付いてくる冬牙。
彼の瞳は狂気の光を放っている。
「朱里は渡さない!!」
「冬牙、こないで!!」
冬牙が怖い。
私の知らない冬牙...。


