泣き崩れる私を支えるようにして抱きしめてくれる春牙。
「嘘じゃない、信じたくはないけど本当なんだ。」
震える春牙。
私の背中で春牙は拳を握り締めていた。
「ここも危ない。朱里、里を捨てる。里に残る人間は俺たち以外は冬牙の手先になった奴らばかりだ。みんな殺された、誰も味方はいないんだ。」
平和だった里は息子のように可愛がった男の裏切りによって地獄となった。
父が守ってきた里。
冬牙はずっと機会を窺っていたというの?
ひどいよ冬牙!!
どうしてよ!!
涙を止めるすべを知らない。
どうすればこの涙は止まるの?
全てを失った、信じていた者の裏切りによって...。
「きっと里は取り返す。今は俺と逃げろ、生き延びねば里を取り戻す機会も失ってしまう。」
体を震わせる私をギュッと抱きしめて春牙は話した。
「そこまでだ!!」
だけど背後から聞こえてきたんだ冬牙の声が...。


