「出ようか。」
彼に手を引かれて店の入り口まで来た。
お会計をする彼に声をかけたけど手で静止される。
私は俯いたまま彼にお礼を言って、そのまま店を出る彼の背中を追った。
着いた先はショッピングモールの一角に広がる広場。
海に向かってベンチが等間隔に並んでいる。
でも彼はベンチを素通りして海に向かって歩いている。
フェンスの前で立ち止まった彼は石段に腰を下ろしたんだ。
「座って。」
声と共に聞こえてくるのは島田さんがポンポンと石段を叩く掌の音。
彼の掌は彼のすぐ隣の石段を叩いている。
「はい。」
私も小さく返事をして彼の隣に少し距離をとって座った。
「正直に言って驚いた。」
かけられた声は想像通りの言葉。
「ごめんなさい、忘れてください。」
「なぜ?」
「それは..その...。」
しどろもどろで言葉が出ない私の肩を抱き寄せて嶋田さんは耳元で囁いたんだ。
「嬉しかったよ。」
「嘘...。」
耳を擽る彼の声に私が落とした言葉は史上最強に可愛くない言葉。
「嘘なんかじゃない。俺を信じて...。」
「嶋田さんみたいな素敵な人がそんな風に言ったらダメです。」
「どうして?」
「本気にしちゃいますよ?女の子はみんな本気にしちゃいます!!」
「みんなはいらないんだって!!芽衣ちゃんだけが本気にしてくれたらいいことだから...。」
もう止められないよ...。
涙が溢れて零れ落ちた。
我慢してたのに止まらない。
「好きだよ芽衣ちゃん。」