病室に入ってきた先生は紫衣の瞳に光を当てて反応を調べている。


眩しそうに顔をしかめる紫衣。


彼女は正常に意識を取り戻したんだ。



「しばらくは安静にしてもらいましょう。まだ混乱しているようなのでゆっくりと治療を進めていきます。」



先生の質問に曖昧な言葉で答えていた紫衣。


階段から落ちたショックで混乱したまま意識を失ったので、正常に記憶が戻るのに時間がかかるかもしれないと診断された。



きっと、あの時の心の傷も影響しているに違いない。


絶対に石田と真衣を紫衣に逢わせるわけにはいかない。



だから.....




「おばさん、紫衣の意識が戻ったこと誰にも言わないで。」



おばさんに頼むしかなかった。



学校に連絡を入れたらきっとすぐにでも石田と真衣は病院に来るだろう。



二人に紫衣は逢わせてはいけないんだ。




「どうして?」



不思議そうに私に尋ねるおばさんに私は今までずっと黙っていたあの日、何が起こったのかを全て話したんだ。