「ごめんなさい...」


シュンと肩を落とす私の腕を引き寄せる佐和さん。


「許さないよ」


言葉とは裏腹に優しく抱きしめてくれる。


耳元をくすぐるように掛けられる言葉にカッと体の熱が上がった。


「本当にごめんなさい」


とっても悲しい...。


だって凄く凄く準備に時間をかけて、この日の為に頑張ったのに...。


渡しそびれるなんて...


そんなのイヤだ。


「佐和さん、私取ってきます」


そうだ。


取りに行けばいい。


今すぐ部屋に戻れば...。


「ダメだよ」


「どうして?」


「嶋田と芽衣ちゃんの邪魔になるだろう?」


「でも...」


「それに...」


ゾクッとするほどの色気を出しながら妖艶に微笑む佐和さん。


吸いこまれそうになって目を逸らすと、


「チョコレートは明日でもいいよ」


「でも...」


「今は紫衣が食べたいな」


「......」


言葉を失う私に降り注ぐ甘い甘い口づけ。


溶け合うような甘い口づけに翻弄されてそのままソファーに倒れこんだ。


「今日は甘いチョコの代わりに甘い紫衣を食べるから」


覚悟しておくようにって言葉の意味を知ったのは、それから数時間後。


彼と甘い時間を過ごした私はぐったりで、


「好きだよ紫衣」


「私もです」


だけどとてもとても幸せな2人だけの時間。


甘いValentineday



fin