部屋に1人残された俺。
つぅか、ここ桔梗の部屋だろ?
どこに行ったかなんて俺にわからない訳はない。
頭の中は桔梗の残した言葉で混乱しつつも忍の術を知っている俺を誤魔化すことは出来ねぇだろ?
「気配を消してもバレバレなんだけど?」
天井を見上げて言葉を掛ければバツの悪そうな表情の桔梗と目が合った。
「紅葉はそういうところが優しくないと言われる要因だと気付くべきです。」
ふわりと床に着地する桔梗。
不機嫌な表情を浮かべながら俺に話し掛けた。
「優しいなんて言われたくねぇし…。」
それに言い逃げする卑怯者にとやかく言われる筋合いはないねってこれ以上ないってくらいの悪態をついてやった。
「物事を全てハッキリさせることが良いこととは限らないのですよ?」
溜息混じりの桔梗の言葉に、
「確かにそうだな…。」
俺は妙に納得させられて軽く息を吐き出した。
紫衣を愛しいと想う心は公にしてはいけない想い。
俺はこの想いを悟られる事なく過ごさなければいけない。
「なぁ桔梗…。」
「なんです?」
「苦しいと思うか?」
「時々は…。」
「俺もだ…。」
「けれど幸せでもあります。」
「そうだな。」