見回りの時間。
俺は溜息を吐きだしながら紫衣の部屋に向かった。
襖をそっと開けると無防備な紫衣の寝顔。
今日はいい夢を見ているのか?
その表情は幸せそうに微笑んで見える。
「どんな夢を見てるんだ?」
幸せそうな顔を見ているだけで俺も幸せな気分になれる。
「紫衣、阿呆紫衣。」
「意地悪紅葉。」
俺の呼びかけに俺の名を呼ぶ紫衣。
阿呆紫衣と呼べば条件反射のように意地悪紅葉と応えるのか?
調教された犬のような奴だな。
俺は喉の奥でクツクツと笑ってもう一度紫衣に呼びかけた。
「紫衣、好きだよ。」
お前が欲しいよ。
俺のものにしたいよ。
声にならない気持ちが心の中で暴れる。
「意地悪だけど優しいから紅葉さん、好き。」