「何も考えてなさそうな相変わらず阿呆面だな。」


寝ている紫衣の顔を覗き込んでそっと呟いた。


頬にかかる髪が紫衣の顔を隠している。


見るだけだ。


それくらい許されるだろう?


誰に問うこともなく自分に問いながらそっと紫衣の頬にかかる髪を指先で払った。


「うん...。」


頬に触れた瞬間寝返りを打つ紫衣。


ドキンと心臓が跳ねた。


でもそのまま紫衣はまた静かに寝息を立てる。


そして「三成様...」と殿の名を呼んだんだ。


嫉妬...。


殿に嫉妬するなんて家臣にはあるまじき感情。


殿の大切な寵姫に想いを寄せるだけで切腹ものだ。


だから絶対に隠し通さなければならない想い。







なのに日に日に想いが大きくなりすぎて溢れてきそうだ。