「この裏庭には薬草や忍術に必要な物しかなかったんだぜ。
それが奴らが来てから変わったんだ。」


沈んだ空気を変えるように話し出す紅葉さん。


彼は私の手を取って歩き出した。


「見てみ?」


彼が指差す方向に視線を向けると、小さな畑があって畑の横には花も植えられていた。


「これは?」


「お前の為だとよ。
ここで出来る野菜も花も全部お前の為の物だって奴ら懸命に世話してた。」


「嘘?!」


「嘘ついたって仕方ねぇだろ?。
あの花見てお前気付かないのか?」


紅葉さんの指の先で咲き誇る小さな白い花。


「部屋に毎日届く花…。」


妊娠してからは部屋からなるべく出てはいけないないからと花をたくさん持ってきてくれたけど、慰めどころか悪阻が始まってからは花の匂いにもムカムカとして部屋から全ての花を下げてもらった。


「匂いのない花…。
お前が唯一そばに置いておけた花だろ?」


「あの花は五助さんたちが?」


「そうだ。」