「紫衣、話を聞いてくれないか…」




腕の力を強くして、それでも出る声は小さく弱いものだった。



俺は脅えているんだ。



紫衣を失うことを....恐れているんだ。



こんな状態まで紫衣の存在の大きさに気付かないなんて俺はいったい今までなにをしてきたんだろう....。




「勝手なことばっかり言わないでよ。
紫衣を傷つけて…
今までずっと黙ってて今更何の話があるっていうの?
最低だよ!!
石田も真衣も!!」




俺の言葉に何も答えない紫衣、変わりに芽衣の言葉が俺に飛んできた。



芽衣の言うとおりだ。


俺は最低だ。


真衣にグラグラして本当に大切な人を手放そうとしていたのかもしれない。


だけど気付いたんだ。


今更..もう遅いかもしれないけど、気付いたんだ。


俺に本当に必要なのは紫衣だって事を。





「紫衣、頼むから話を聞いてくれ。
このまま誤解されたまま卒業なんて出来ねぇよ。話を聞いてくれ。」



もう逃げない。


だからお願いだ、頼むから紫衣も俺に向ってきてくれ。


どんな言葉であろうとお前の気持ちに応える様に俺は心で応えるから....。