憎ったらしい紅葉さんの言葉には極力耳にいれないようにして朱里さんの言葉だけに集中した。
「それで?
それで何で今日になって五助さんと六助さんの正体を話したの?」
「それは…その…。」
しどろもどろな朱里さんに変わってあっけらかんと口を開くのは五助さんで、
「俺達が奥方様が動けなくなる香を焚いていたのが紅葉にバレちゃったからさ。」
「ふ~ん……―えっ?」
ちょっと待って!
今、なんか恐ろしい事話してなかった?
「俺達にもわからないくらいに巧妙にコイツら妙なことしてたんだよ!」
なんだかとっても不機嫌な様子で話をする紅葉さん。
けど、私にはサッパリ話がよめなくて
「よくわかんないからちゃんと説明して下さい。」
五助さんと六助さんを正面に見据えて口を開いた。
ちょっとは毅然と見せたくて敬語を使い、背筋を伸ばして彼らの言葉を待つ。
「奥方様を警護するにあたって問題が多すぎたんさ。」
「というと?」
「奥方様はちょこらちょこら動きすぎるだろ?」
「そうかしら?」
「そうさ!安静だって言われてるのに隙を見ては庭に出るし、目が離せねぇ。
だから奥方様が大人しくなるように、ちょっくら香を…。」
もしかして…
もしかしなくても…
私が悪阻だと思っていたのは…
「そのヘンテコリンな香のせいだったのぉ?!」


