「そんなに緊張していては楽しく美味しく食べることが出来ないのではないですか?」
もう一度2人に話しかける私に、
「お前がいるから緊張してるってわかって言ってるのか?」
大きなため息とともに紅葉さんの言葉が落とされた。
「えっ?原因は私なの?」
「気づいてなかったのか阿呆紫衣。」
「阿呆紫衣って呼ばないでって言ってるでしょう?」
「そうだったっけ?」
「惚けるな!意地悪紅葉!!」
さっきまで不機嫌だったから大人しくしていた紅葉さんが話をし出したら部屋は私と紅葉さんの言い争う声でとても賑やかになった。
憎たらしいけど、パッと明るくなった気がする。
「こんなに阿呆な奴なんだから、殿の奥方様だからって緊張する必要ないってわかった?」
紅葉さんはニヤリと笑いながら呆気にとられている五助さんと六助さんに話しかける。
だけど2人は眉をハの字に下げて返答に困っている様子で、やっぱりさっきと同じように両手を胸の前で振りながら頭を下げた。
私が奥方だから緊張しているの?
なのにどうして朱里さんと紅葉さんは2人を部屋に連れてきたんだろう。
「ねぇ、2人はこの屋敷で何をしているの?」
「今は馬の世話。」
「じゃあ、今じゃなくなったら?」
「修行中なんだよ。」
「やっぱり忍になるの?」
「そういうこと!」


