「初めてお目にかかります。奥方様、五助と申します。
コイツは弟の六助、以後お見知りおき下さいませ。」
耳まで真っ赤に染めた五助さんが隣で固く身を縮こませている六助さんの後頭部を押さえつけながら深く頭を下げた。
意地悪な紅葉さんに抗議しようと大きく息を吸い込んでいた私はびっくりして、ゴホゴホと咽せてしまった。
咽せながらも私も頭を下げて、
「紫衣です。
こちらこそよろしくお願いします。」
私も挨拶を返した。
なんだか凄く緊張する。掌の汗をキュッと握りながら、あてにならない紅葉さんではなく朱里さんに視線を向けた。
私に向けてニッコリと微笑んで小さく頷くと朱里さんは立ち上がり、紅葉さんに近づくと頭に手刀を落としてから、
「さぁ緊張する席ではありませんよ。
この馬鹿は放っておいて頂きましょうか。」
頭を抱えてうずくまる紅葉さんをポカンと一蹴りして五助さん達を手招きしていた。


