青褪めた紫衣の表情。


そりゃそうだろう...嶋田がスッゲ恐ろしい顔で立ち上がったんだ。



ビクビクしている紫衣は、まるで小動物。


追いつめられた小動物とその姿が重なって全力で守ってやりたくなる。



嶋田の迫力に呆気に取られている間に俺は紫衣の後ろに移動した。


そりゃ俺だって嶋田ほど感情をストレートには出さないけど不機嫌な顔してたはずだ。




向かい合う二人が俺たちの気配を感じたのか体に力が入るのがわかった。


その様子を見て嶋田はニンマリと不敵な笑みを浮かべて紫衣を見ていた。


俺は嶋田と同じタイミングで仁王立ちで腕を組んで芽衣ちゃんと目を合わしたんだ。




凍りついたような表情の芽衣ちゃん。


紫衣も同じ表情をしているだろう。




「随分と楽しそうだな。」


「明日どこに行くんだって?」



順に俺、嶋田の言葉。



こんな時の俺たちの呼吸はピッタリだ。


合わせようと意識しなくても自然に合うようになっている。



「えっと...その、ね?明日は嶋田さんと一緒にプラネタリウムに行く予定ですッッ。」



シャキッと背筋を伸ばして応える芽衣ちゃんに俺は思わず微笑んでしまった。


きっと彼女も演技なんだ。


この場で本気で驚愕しているのは紫衣だけなんだろう?


その証拠に嶋田に抱き上げられたまま部屋を出て行く時に彼女は紫衣にウインクしていた。